常設展文学館アーカイブ [令和7年度]
常設展示室内にある「常設展文学館アーカイブ」コーナーは、北海道立文学館に新たに収蔵された資料や当館コレクション中の資料をテーマに従って紹介するコーナーです。
こちらは、常設展「北海道の文学」の観覧料でご覧いただけます。
なお、1年を通して北海道の文学の概要を紹介している 常設展「北海道の文学」については、こちらをご覧下さい。
第1期 伊藤整「日本文壇史」を紐解けば
会期:2025年4月12日(土)~6月8日(日)
所蔵資料による小さな企画展「文学館アーカイブ」。今回は、今年生誕120年を迎えた伊藤整(1905~1969年)の大著「日本文壇史」に注目します。
「日本文壇史」は、膨大な資料を渉猟して、同時代の文学者や思想家、政治家の関係や影響を明らかにしようとした時代群像の描出の壮大な試みで、この仕事によって伊藤は菊池寛賞を受賞しています。
1952年から連載が開始され、順次単行本化されました。執筆は伊藤が没する1969年まで続けられ、没後は瀬沼茂樹が引き継ぎ、1976年に全24巻が完結しています。
本展では伊藤整執筆の第18巻(明治末)までを対象とし、森鷗外、幸田露伴、夏目漱石、正岡子規、尾崎紅葉、徳冨蘆花、国木田独歩、幸徳秋水、島崎藤村、樋口一葉、田山花袋、泉鏡花、石川啄木ら文壇を動かしてきた文学者たちにまつわるエピソードを本文中から選りすぐって紹介。併せて関連書籍を展示します。
驚くべき情報量にもとづく魅力的テーマの選択、卓越した構成力によって読者を引き込むこの大作に一人でも多くがふれ、日本近代文学に親しみを感じていただく契機になれば幸いです。
常設展 文学館アーカイブ 2025 第1期 伊藤整「日本文壇史」を紐解けば チラシ(PDF)
関連事業のご案内
『日本文壇史』っておもしろい!
| 開催日時・会場 | 2025年5月14日(水)14:00~ 約60分 当館講堂 |
|---|---|
| 講師 | 苫名直子(北海道立文学館副館長) |
| 申込方法 | 定員60名(要申込、先着順)〔聴講無料〕 4月30日(水)9:00から電話で受け付けます。 |
第2期 北の密室考
会期:2025年6月18日(水)~8月24日(日)
所蔵資料による小さな企画展シリーズ・文学館アーカイブ。今回は、ミステリー小説、中でも「密室もの」に注目します。
「密室」――閉ざされ外部と遮断された部屋。そこで起こる殺人事件。密室殺人は、ミステリー小説における「不可能犯罪」の一種であり、国内外の多くの作家によって様々なトリックと趣向を凝らした作品が書かれてきました。
北海道は、あまたのミステリー作家を輩出し、また作品の舞台としても度々選ばれる、まさにミステリー小説の宝庫といえる場所です。広大な自然や独自の風土をモチーフとしたミステリー小説が思い浮かぶかもしれませんが、同時に「密室」を題材にしたミステリー小説にもすぐれた作品が数多く存在します。
本展では、当館が所蔵する北海道に関わるミステリー小説から密室殺人を題材にした作品、いわゆる「密室もの」を展示します。北海道を舞台にした作品、また、北海道ゆかりの作家による作品をご紹介し、北海道ミステリーの一つの楽しみ方をご案内します。
常設展 文学館アーカイブ 2025 第2期 北の密室考 チラシ(PDF)
第3期 函館の作家たち
会期 前期:2025年9月2日(火)~9月18日(木)
北海道の中で独特の雰囲気を持つ函館ゆかりの文学者を当館所蔵資料をもとに紹介します。
第4期 村上春樹と北海道
会期:2025年11月19日(水)~2026年1月18日(日)
現代の日本文学を代表する小説家・翻訳家であり、世界中に多くの読者を持つ村上春樹(1949年京都生まれ)。その作品の多くは東京が舞台ですが、『風の歌を聴け』『国境の南、太陽の西』では村上が高校時代を過ごした兵庫(神戸)、『海辺のカフカ』では香川(高松)、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』では愛知(名古屋)、『騎士団長殺し』では神奈川(小田原)が主要な舞台となっています。
そして、村上春樹の作品の舞台として欠かすことができないのが北海道です。
初期の長編『羊をめぐる冒険』(1982年)では、道北に位置する架空の町「十二滝町」が重要な舞台となり、その続編『ダンス・ダンス・ダンス』(1988年)では雪の残る3月の札幌から物語がはじまります。
また、大ベストセラーとなった『ノルウェイの森』(1987年)では終盤の部分に旭川の地名が印象的に用いられ、ノモンハン事件など過去の戦争の歴史が物語に織り込まれる『ねじまき鳥クロニクル』(1994・95年)では旭川出身の登場人物が描かれます。
阪神淡路大震災後の短編連作「地震のあとで」の第1作目「UFOが釧路に降りる」(1999年)では釧路が舞台となり、地下鉄サリン事件が執筆の動機の一つとなった『1Q84』(2009・10年)では北海道と歴史的なつながりを持つ樺太(サハリン)ゆかりの人物が作品に顔を出します。
映画化されて話題となった「ドライブ・マイ・カー」(2013年)では中頓別出身の人物が、また、最近作長編『街とその不確かな壁』(2023年)にも札幌出身の人物が登場しています。
本展では、村上作品に現れる「北海道」に注目し、どの作品でどのように北海道が出てくるのか、扱われているのかをご紹介いたします。ぜひ、この機会に作品を手に取り、村上春樹ワールドに一歩、二歩と足を踏み入れていただけますと幸いです。
第5期 新収蔵資料から一紙芝居
会期:2026年1月28日(水)~3月26日(木)
あらたに故稲村眞禮氏から寄贈された貴重な戦前・戦中の紙芝居を紹介します。
